風に溶けて消える

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【読んだ】森博嗣の小説「すべてがFになる」の名言を集めてみた

 

ミステリー小説は、夜出歩いたり寝るタイミングで怖くなったりするからあまり読みたくないのだけれど、たまに読みたくなる。

すべてがFになる」は、500ページあるわりと分厚めの小説だったけど、ページをめくる手が止まらずすぐに読破してしまった。

魅力的なキャラクターが多く出てくる小説。引用しながらレビューします。

後半ネタバレあり。

 

すべてがFになる」あらすじ

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14歳の時に、両親を殺した天才プログラマ真賀田四季。彼女はそれから、孤島の研究所に隔離され、15年の年月を経た。研究所には窓もなく、四季はずっとその中にいるため、15年間一切外の世界を見ていない。

その天才プログラマに会おうと研究所を訪れるのが、犀川(さいかわ)創平と西之園萌絵

だがその日、四季の部屋から、両手両足の切断された遺体が出現した。

四季が隔離されていたその密室で行われた殺人とは。

 

登場人物のキャラクター

まず、この小説の魅力的なところは、登場人物のキャラクターだ。

天才プログラマ真賀田四季は、天才設定なんだけど、話す言葉に本当にオーラが感じられる。

工学部の助教授である犀川は、ザ・理系の人間といった感じで、思考も発言も合理的。

犀川の勤める大学の学生である萌絵は、頭の回転が早くて上品な、世間知らずのお嬢様。

 

四季の言葉もそうだが、私は特に、犀川先生の言葉が印象的だった。

 

犀川先生語録

萌絵との会話の一節。

自然を見て美しいと思うこと自体が、不自然なんだよね。汚れた生活をしている証拠だ。窓のないところで、自然を遮断して生きていけるというのは、それだけ、自分の中に美しいものがあるということだろう?

 

犀川先生の頭の中での台詞。

Time is moneyなんて言葉があるが、それは、時間を甘く見た言い方である。金よりも時間の方が何千倍も貴重だし、時間の価値は、つまり生命に限りなく等しいのである。

 

印象に残った好きな台詞、思考だけ切り取ったけれど、犀川先生は常に合理的で冷静なものの見方をする。悪く言えば、とてつもなく冷めている。だけどすごく惹きつけられるものがある。

時は金なり、は時間を甘く見た言い方、なんて初めて聞いた。こういうハッとさせられる思考が魅力的。きっと私は犀川先生の思考に惚れてしまっている。

 

理系の大学の先生だけあって、どうも浮いた話はなさそうなのだけれど、ちょこちょこモテそうな場面があってそれもまたいい。

 

これはモテる語録

萌絵が、事件の解を導いた場面では、2人のこんなやりとりがある。

萌絵は犀川の方を見た。彼女の目から、涙が今、こぼれた。

(ああ、彼女は気がついた)と彼は思う。

「何か冗談でも言おうか?」犀川は優しく言う。

 

残酷な事件の真相に気づいた萌絵が涙を流す場面では、萌絵が真実に気づいたことを察しても口にせず、冗談でも言おうか、と言う。これはずるい、非常にずるい。頭のいい人間は往々にしてずるさを持ってる。ずるい。

隣に非常に頭のキレる西島秀俊がいるとして、再生してみてほしい。死ぬから。

 

天才が最後にいう言葉

天才プログラマ真賀田四季の台詞も非常に印象的だ。というか、すべてをかっさらうほどの破壊力。

 

何も疑わず、議論の余地も残さないと言わんばかりに、"死んでいることこそが正常で、生きていることはバグだ"と言った後の台詞。

眠ることの心地良さって不思議です。何故、私たちの意識は、意識を失うことを望むのでしょう?意識がなくなることが、正常だからではないですか?眠っているのを起こされるのって不快ではありませんか?覚醒は本能的に不快なものです。

 

確かに、と納得してしまう。少し、死に対する恐怖とかそういったものが、薄まる台詞。

 

「死刑って、いつ執行されるのか教えてくれるのかしら?私、自分が死ぬ日をカレンダに書きたいわ・・・・・・。こんな贅沢なスケジュールって、他にあるかしら?」「どうして、ご自分で・・・・・・、その・・・・・・、自殺されないのですか?」「たぶん、他の方に殺されたいのね・・・・・・」四季はうっとりとした表情で遠くを見た。「自分の人生を他人に干渉してもらいたい、それが、愛されたい、という言葉の意味ではありませんか?

 

ここだけ切り取ると、言っていることはめちゃくちゃなんだけど、四季が言うことでスッと腑に落ちるというか、納得できる。

巧妙なキャラ作りだからこそなせる技だなあと思う。

 

愛なんて必要としなさそうな天才プログラマが、最後には、愛されたいと言う。そしてその愛されたいの形が、常人から見ると極めて歪で苦しい。でもそういうものって、やっぱりどこか美しい。

 

おわり

ミステリーなんだけど、生とか、死とかまで、いろいろ考えさせられる小説だった。最後の引用セリフ抜けばネタバレなしにできたんだけど、好きすぎて入れてしまった。

何度も言うけど登場人物のキャラがとても魅力的だから、残酷な結末でもあまり苦しまずに読める。読後の爽快感はある方でした。

では。

 

すべてがFになる (講談社文庫)

すべてがFになる (講談社文庫)