宇多田ヒカルの『初恋』は初恋の第2フェーズだと思うんですが
初めてする恋、で、初恋。
本当にそうなのかなと思う。というか、本当にその認識でいいのかなと思う。
たとえば、『ああ恋だ』と認識したのが小学校一年生の時だったとする。しかしそこにある好きの基準は何なのだろうか。
小学生である。大抵の場合は、足が速いとか、バスケが上手いとか、そんなもんだろう。(偏見)
はたしてそのような幼い恋を、安易に初恋と言ってしまっていいのか。
初恋って、そんなに軽いものなのかと、歳を重ねてから思うようになってしまった。
そこで読み解きたいのが、宇多田ヒカルの『初恋』である。
完全に私の個人的な歌詞の見方だと断りを先に入れますが、この曲は確実に小学生や中学生の初恋ではない。大人の初恋だ。初めての恋、の次にある初めての恋、みたいな。第2フェーズ的な。
恋ってそういう局面ありませんか。今まで初恋って言ってたやつ、「あ、あれ違うな」みたいに感じる瞬間ありませんか。そっちの初恋だと思うんですよ、この歌詞は。
うるさいほどに高鳴る胸が
柄にもなく竦む足が今
静かに頬を伝う涙が
私に知らせる これが初恋と
と、サビから始まる曲。これだけならば確かに、初恋だ。初めて味わう恋の感覚、だけれども。
人間なら誰しも
当たり前に恋をするものだと
ずっと思っていた だけど
もしもあなたに出会わずにいたら
誰かにいつかこんな気持ちに
させられたとは思えない
1番のAメロのここだ。どうしても私には、初めて恋をした人の感情には思えない。
だって初恋なんて、もっと浮かれてるものじゃないですか。
歌詞だけじゃなくてぜひ曲も聴いて欲しいのだが、この曲は初恋を歌っているのにとても暗い。暗いトーンだからこそ、闇が垣間見えてくる歌詞である。
小学生だろうと高校生だろうとハタチだろうと、本当の本当に"初めて人を好きになったとき"に、こんな闇が覗く思考をする人はいますか?
好き!やば!めっちゃカッコイイわ好き〜〜!
でしょ?脳内お花畑でしょ?ほらな?
当たり前に恋をしてきたけど、でもこんな恋、知らなかった、と読む方が自然な気がする。それかこの主人公がめちゃくちゃ根暗かどちらかです。ハイ次。
どうしようもないことを
人のせいにしては
受け入れてるフリをしていたんだ
ずっと
もしもあなたに出会わずにいたら
私はただ生きていたかもしれない
生まれてきた意味も知らずに
2番に入り、歌詞はさらに深みを増す。これは完全に恋を今までにしてきた人間の言葉ではないだろうか。完全に第2フェーズである。
この曲、ここでは終わらなくてCメロがすごい。
欲しいものが
手の届くとこに見える
追わずにいられるわけがない
正しいのかなんて本当は
誰も知らない
これめっちゃ怖くない?Cメロってのがさらに怖い。「追ぉ〜〜わ〜ずぅに〜〜」のメロディーがなんか食い気味なのもヤバい。正しいのかなんて本当は誰も知らないって何?不倫なの?第2フェーズの初恋は不倫だったの?
そんな感じあるよね、ヤバい。
そしてラストサビにはこう歌う。
狂おしく高鳴る胸が
優しく肩を打つ雨が今
こらえても溢れる涙が
私に知らせる これが初恋と
最後にくる初恋というワードの重さ。
"初恋"は本来甘酸っぱくて爽やかなイメージのワードじゃないか。それがこの曲ではこの重さである。
完全に第2フェーズだし、完全に大人の初恋。愛にも近いような気がするのに恋なのは、不倫とかなんとか訳ありでひとりよがりだからなのかもしれない。
書いてるうちに私自身もなんか歌詞の深さで死にそう。
この曲だけでなく宇多田ヒカルの『初恋』というアルバムは本当に最高なので今すぐ1曲目から聴いて欲しいし私は第2フェーズの初恋を書きたいです。曲にしたい、いつか。
では。