田中泰延著『読みたいことを、書けばいい。』とpatoさんとの対談に見た「ライター」という仕事
『ライターになりたい』
そんな人は大勢いる。私だってそのうちの一人だ。仕事で文章を書いているからライターではあるんだけれど、会社の看板を担がずとも個人のスキルで通用するライターになりたい。そんな夢があったりする。
そしてライターという人種は、文章が好きなんだろうと思っていた。
でも、そうでもないみたいだ。
上記の記事は、webで文章を書いている田中泰延さんとpatoさんの対談。以前、田中さんの書籍『読みたいことを、書けばいい。』を読んで惹きつけられてしまった私は、軽い気持ちでリンクをクリックした(そしたらすごく長かった)。けど一気読みしてしまった。
この対談で、お二人とも、"文章を書くことが嫌い"だと言っている。田中さんは著書に書いていたから知ってたけれど、patoさんもなのか、と少し驚いた。ライターとは、文章を好きな人がやっているというイメージがあったから。patoさんは、「文章を書くということは、息継ぎなしで潜っているようなものだ。」とまで言う。私は、比喩が儚くて素敵だ…となりました。
田中さんの著書とこの対談を読んで、ようやく「ライターとはなんたるや」みたいなのがわかった気がする。なので、田中さんの著書をpatoさんとの対談を交えて紹介します。
ライターとは知的好奇心の上に成り立つ
これまでライターとは、文章が上手い人がなれる職業だと思っていた。そして、自分の得意とする分野についてとうとうと語るものだと。しかし、どうもそうではないようだ。
田中さんは、「物書きは『調べる』が9割9分5厘6毛だ」と言う。
ライター界では当たり前なのかもしれないが、そんなことさえ知らなかった。
知らないことを、徹底的に「調べる」。
文章を書くのはその後だ。このライターの真実に、私は心救われる気持ちだった。なぜなら私には、人より詳細に語れるものがないから。
文章が上手い人は、世の中にごろごろいる。対して、知的好奇心旺盛な大人はどのくらいいるだろうか。わからない、わからないが、文章が上手に書ける人の方が多いのではないだろうか。知らんけど。
文章の上手さよりも、ありあまる知的好奇心の方がライターには必要なのかもしれない、そんな気がした。
対象に愛と敬意、真摯さを持つ
これは、田中さんの著書とpatoさんとの対談で書かれていた話。
対象に愛が持てないと、やっぱり文章を書くのは苦しい。
駆け出しライターの私といえども、これはありがたいことに経験がある。
私は影響されやすい性格だからだろうが、書き始めた対象にすぐのめり込む。
今まで書いた記事、特に「はちみつ」なんかは、もうめちゃくちゃ好きになったし、なんなら未だに100g1,000円する本物の非加熱はちみつを家に常備しているくらい好きだ。
↑仕事で初執筆のはちみつ記事
そして今調べている「チーズ」もほんとうに危ない。チーズ、種類やら食べ頃やら奥が深すぎてマジで沼。ハマりそうで危険(ハマったら本格派チーズは高いから破産です)。
一方で、「和食」についての記事を書いたときはなかなか苦痛だった。日本人なのにどうしても和食に興味が持てなかったのである。
そのとき私は、「興味が出そうにない題材には手を出さない方がいいな」と思ったのだけれど、仕事でやる以上避けられない題材だって出てくるわけだ。
そういう場合について、田中さんは著書でこう述べている。
対象に対して愛がないまま書く。これは辛い。だが、一次資料には「愛するチャンス」が隠れている。お題を与えられたら、調べる過程で「どこかを愛する」という作業をしないといけない。それができないと辛いままだ。
「調べる」ことを進めることで、対象に愛が生まれる。どこかしら愛せる部分が出てくる。確かにそういうことって多い。最初は興味がなくても、知っていくうちに楽しくなって最終的には好きになる。このサイクルがキマれば勝ちなのだろう。
そして対談でお二人は、"文章を書く上では、真摯さとひたむきさが大切"だと言っている。
おごり高ぶって、上から目線で見下ろされているように感じる文章じゃ、人の心は動かない。確かに文章って、なんとなく書き手の温度感が伝わるところがあるなと感じる。この場合も、やはり根本は「愛と敬意」だ。対象に対して、愛と敬意をもって文章を書くと、自然と真摯に書けるのだろうと思う。
おわり
文章を書く仕事を始めて、そろそろ1年が経つ。最近、「どのように書けばいいのか」「ライターとしてどのように在ればいいのか」そういうことがわからなくなっていた。しかし、徹底的に「調べる」ことが大事だと知れて、やるべきことがとても明確になったように思う。
そうして文章を書くために徹底的に調べていると、私は5歳児かな??というくらい知的好奇心がありあまってくる。超楽しい。もっと知りたい、もっともっと、って、本当に幼少期だった頃の気持ちを思い出すのだ。それがすごく新鮮で、幸せだったりもする。
そして田中さんの著書はこちらです。『文章術』とサブタイトルでは謳われているけれど、人生にも通ずることがあった。個人的には、音楽をやる上でも役に立つなあと思うことがありました。おすすめです。